H伝説の男

2011年11月

伝説の男 vol.1 「チャンプ」

 ガラパン・ビーチロード沿い。週末の夜ともなると、エントランスから溢れんばかりの人たちが集まるバーがある。The FLAIR Bar(ザ・フレアバー)。 第1回目の”伝説の男”は、その店のカウンターに舞う、華。こう呼ぶにふさわしい、艶やかさを放ち続けるイケメンバーテンダー。通称、チャンプ。2005年’BarWars2Bartender Competition’のカクテル部門で堂々の第1位を獲得したことに由来している。サイパンという小さな島に、なぜ、そんな男が・・・と訝しがる人も多いかもしれない。世界に通じる技術を持ち合わせながら、なぜ、そのステージにサイパンを選んだのか。それは、ほんの小さな”ひらめき”から始まった。

  1976年6月16日、ソウルにて生誕。父親がサウジアラビアのバレーボール国家代表監督だったため、2歳から8歳までをサウジアラビアで。韓国に戻ったのは小学生の時。以降、大学卒業までを韓国で過ごした。2000年、韓国のThe FLAIRに入社。幼い頃から海外生活を経験していたこともあり、”世界で通じる仕事”がしたかった。2年後には店長に昇格。

 そして2003年、休暇でのサイパン旅行。何件かあるバーは、ただ飲むだけの飲み屋で、バーテンダーと呼べる人物はどこにもいなかった。英語が話せない彼にできることといえば、とにかく飲むことだけ。静か過ぎるサイパンの夜。楽しいはずがない。そんな彼の脳裏にひらめいたのが、ショーとマジックを観せるバーテンダー。その向こうにお客様が大喜びしている風景だった。彼は早速、韓国本社に自分のアイデアをプレゼンテーションした。結果はGoサイン。2005年5月、発案者として彼はサイパン店を任されることになった。

 チャンプは一度、バーを失敗させたことがある。立地の悪い場所。誰もが反対した。にもかかわらず、彼は自分の技術に自惚れていた。自分に客はついて来る。勘違いだった。お店は、あっという間に閉店に追い込まれた。この経験が彼を現実に引きずり戻した。冷静にマーケットを分析して、謙虚なまでにお客様をもてなし、少しずつ顧客を広げ、サイパンの夜に新しいエンタテイメントシーンを創り上げていったのである。 500種類のカクテルをつくってきた、世界に通じる本物のバーテンダー。まるでトムクルーズの映画「カクテル」のように、今宵もサイパンの夜を熱くする男、チャンプ。これからも、彼の”ひらめき”に期待したい。

戻る